小児整形

①肘内障

【症状および病態】親が子供と手をつないで歩いている時、こどもが転びそ うになったのでとっさに手を引っ張ったら、急にこどもが泣いて手を動かさなくなった、というのが最も典型的な起こり方で、原因は橈骨頭を支える輪状靭帯から橈骨頭が半分抜けかかるためといわれています。歩 きはじめから5歳くらいまでの子供で、特に1歳から3歳の幼児に最も多く起こります。子供は突然泣き出し、痛めた方の腕を使おうとしなくなり、また触れられることを嫌がります。腕は麻痺をしたようにだらりと垂れ、内側を向いたようになります。
【診断および治療】亜脱臼した関節が自然に元に戻ることもありますが、多くは自然に治らないので治療が必要です。通常徒手整復で関節を元に戻します。完全に整復されると、子供はすぐに肘を曲げたり手を使うようになります。しかし、幼児が一人で遊んでいたり、友達と遊んでいたりしている時などに起こると、けがをした原因がわからないこともあります、このような時は、肘の関節のまわりの骨折や鎖骨の骨折などがないか、レントゲンを撮るなど注意深く診断する必要があります。
【注意点】5~6歳になると靭帯がしっかりしてくるのであまり再発は起こりませんが、一度肘内障が起こると繰り返すことが多いので,治ってもそのあとは手を強く引っ張らないように注意しましょう。


②単純性股関節炎

【症状および病態】子供の股関節痛をきたす疾患で多く見られ、突然の股関節の痛みのために足を引きずって歩くことで発症します。その病因、病態はまだ分からないのですが、過去の報告によると、風邪などのウイルス性感染症にかかった後に、3割の患者さんが発症したといわれています。好発年齢は4~6歳ぐらいに多く見られ、2割ぐらいは複数回発症するケースもあるという報告もあります。

【診断および治療】レントゲンで骨に異常ないか検査します。必要に応じて超音波検査を行い、関節に液の貯留がないか確認します。治療は消炎鎮痛薬の内服と数日安静にし、様子を見るだけで症状は治まってしまいます。単純性股関節炎の場合には1週間ぐらいで治まります。しかし、痛みがなかなか変わらなかったり、熱がなかなか下がらない場合には化膿性股関節炎やペルテス病など他の関節性疾患を疑うので、注意が必要です。


③環軸椎回旋位固定

【症状および原因】環軸椎回旋位固定とは、首が左右どちらかに傾いていたり、傾いたまま動かせなくなったりする「斜頸」と呼ばれる疾患の一種で、第一頸椎と第二頸椎で形成された環軸関節の亜脱臼です。症状としては首の傾きの他、無理に動かそうとすると痛みが走ります。固定位が完成すると疼痛は軽減しますが、傾きは持続し、放置した場合には顔面や頭部の変形を来たすことがあります。また、慢性化した場合には再発を繰り返すケースもあります。多くは小児期・学童期にみられる疾患です。この時期では環軸関節面が浅く未発達であること、また周囲の靱帯には緩みがあるため、ちょっとした外傷や喉の炎症などによって発症することがあります。

【診断および治療】早期の環軸椎回旋位固定の場合は、ほとんどが数日から10日程で自然に治癒します。治療では、消炎鎮痛薬の使用、頸椎カラーを用いた装具固定や、喉の炎症が要因とされる場合には抗生剤による薬物療法が行われます。1週間以上経過しても治癒しない場合には、牽引治療を行うこともあります。関節変形がみられ、整復が困難な場合や神経症状を伴う場合には手術を行う場合もあります。


④側弯症

【症状】脊椎が左右に弯曲した状態をいいます。脊椎自体のねじれを伴うことがあります。通常、小児期にみられる脊柱変形を指します。 左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起、などの変形を生じます。学校の検診で指摘されることがほとんどです。通常、自覚症状が乏しいですが、側弯が進行すると、腰背部痛や心肺機能の低下をきたすことがあります。

【原因】多くの場合は原因不明の「特発性側弯症」で、全側弯症の70%程度を占めます。そのほか、脊柱の先天的な異常による「先天性側弯症」、神経や筋肉の異常による「症候性側弯症」があります。側弯症の発生頻度は2%程度で、女子に多く見られます。

【診断】診察では、子供に前かがみの姿勢をとらせて後ろから脊柱を観察します。神経が筋肉の異常による症候性側弯症の鑑別には、神経学的検査やMRI検査が有効です。全脊椎のレントゲン写真から側弯の程度を評価しますが、椎骨や肋骨に異常がないかも同時に調べます。短期間で側弯が悪化してくる場合には、注意深く年に数回の診察が必要になります。

【予防と治療】側弯症の治療は側弯の原因や程度、年齢などによって異なります。特発性側弯症で程度が軽い場合には、運動療法などで経過観察しますが、進行する場合には装具治療を行います。成長期である思春期に悪化する場合が多いため、進行する場合は手術による矯正が必要になる場合があります。先天性や症候性で側弯の悪化が予想される場合にも手術を行うことがあります。